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HIITチャレンジで内臓脂肪減量と脂肪肝改善の効果を認めました

更新日:2024年06月19日
〝運動は薬〟外来

「運動は薬」外来のブログ第9回目です。今回は、当院で職員を対象に行ったHIITチャレンジの結果についてご紹介します。

高強度インターバルトレーニング(High Intensity Interval Training)は、英語表記の頭文字をとってHIIT(ヒット)と略称され、フィットネス業界のみならず医療分野でも注目を集めている運動プログラムです。第7回目のブログでも紹介しましたが、内臓脂肪の減量に効果があることが報告されていましたので、その効果を実体験するためのプロジェクトを企画しました。

HIITチャレンジ”と称して当院職員からボランティアを募り、3か月間このトレーニングを行ってもらい、体重、血液生化学検査、内臓脂肪量のデータを3か月の前後で取って比較検討しました。今回施行したHIITでは、スクワットなどの5種目の運動を用意し、30秒間の運動と30秒間の休憩を繰り返して、2セット行うことで計10分間のトレーニングとしました。慣れてくれば各種目の回数をできるだけ増やしてもらい、息が上がる程度まで運動強度を高めてもらいました。HIIT施行の頻度は任意としましたが、多くの方が週3回のペースで行っていました。また、特別な食事制限は設けませんでしたが、糖質や加工食品の過食を避けるよう食習慣の指導も併せて行いました。

9名の参加者でHIITチャレンジを実施し、3か月前後のデータを取得できました。体重は減少する方も増加する方もいましたが、全員の平均では0.8㎏の減少でした。内臓脂肪については、全員が減少し、平均では13.5%の減少でした。皮下脂肪については6.1%の減少であり、過去の報告に一致し、HIIT施行においては内臓脂肪の方がより減少しやすいという結果でした。血液生化学データは、もともと正常な方がほとんどで、施行後も著しい変化はありませんでしたが、1名で脂肪肝による肝胆系酵素の上昇を認めていたのが、3か月後にはその数値が改善していました(AST 6626ALT 6822LDH 257201、γ-GTP 302116)。CT所見でも、下の図に示すように脂肪の蓄積により肝臓のCT値が脾臓のCT値より低下していたのが、HIITチャレンジ後には逆転して上昇し、画像でも脂肪肝が解消されていることが分かりました。また、6か月までチャレンジを延長した方では段階的に内臓脂肪が減少し、一般のダイエットでよく見られる停滞期がないまま、良好な経過をたどりました。

食習慣の指導も行っているため、内臓脂肪の減少と脂肪肝の改善がHIITだけの効果とは言い切れませんが、皮下脂肪よりも内臓脂肪の減少が大きいこと、脂肪の量の減少に比べて体重があまり減少していないことから筋肉量は増加していた可能性があるなど、HIIT施行がより良い効果を生み出していたのではないかと考えています。10分程度の運動内容で週3回程度の施行でしたが、腹囲が一回り小さくなった、階段の上りや小走りをしても息切れしなくなった、疲れにくくなった、など、多くの参加者がHIITによる体型、体調の良い変化を実感していました(これはいわゆる個人の感想ですが、、、)。

今後、当院の“運動は薬”外来でもHIITを取り入れた運動指導を広げていきたいと思いますので、興味のある方は“運動は薬”外来を受診していただければと思います。

HIITチャレンジ開始前のCT

 

HIITチャレンジ終了後のCT

 

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです。