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HIITは近年注目されている運動トレーニングです

更新日:2024年05月21日
〝運動は薬〟外来

「運動は薬」外来のブログの第8回目です。

今回は前回のブログで触れた非常に強い負荷の運動を繰り返し行う高強度インターバルトレーニング(High Intensity Interval TrainingHIIT)について紹介したいと思います。

1970年代から競技スポーツのパフォーマンス向上のために、高強度のインターバルトレーニングが試みられていましたが、1996年に立命館大学の田畑教授が、20秒間の最大強度運動と10秒の休憩を8セット(合計4分)行うことで、最大酸素摂取量(VO2max)および無酸素運動能力が向上することを報告しました1)。この論文は国内よりも海外でまず注目され、“Tabata training”や“Tabata workout”として紹介され、スポーツ界のみならずフィットネス業界でも流行するようになりました。運動強度、時間、回数などは様々なバリエーションが考案されており、YouTubeなどで“Tabata workout”と検索すると、紹介されているトレーニング動画の多さに驚かされます。

HIITの基本的な方法は、2060秒程度の高強度運動と1060秒の休憩のサイクルを複数回繰り返すものですが、オリジナルのTabata trainingのように最大能力を出し切る運動の場合は、20秒×8セットの運動でアスリートでも疲労困憊状態になるとされています。このようなハードなものについては、HIITとは別にSprint Interval TrainingSIT)と呼称されます。一般にネット上で紹介されているHIITでは、スクワットや腕立て伏せなど複数の運動を組み合わせ、トータルの時間が数分から30分程度となっています。しかし、スピードを上げて心拍数を高め、肩で息をする状態にすれば、10分程度の運動でも十分に体を追い込むことができます。

前回、HIITで内臓脂肪を減少させることができると紹介しましたが、近年ではHIITが疾患の予防や改善に有効であるかを調べる研究が進んでいます。いくつかの研究ではHIITと中強度持続的トレーニング(Moderate-Intensity Continuous TrainingMICT)を比較してその効果を調べていますが、HIITMICTと同等か、もしくはより良い効果を示したと報告されています。心不全患者の運動療法においても、HIITの方がMICTよりもVO2maxがより上昇したと報告されており、これはHIITの有効性のみならず安全性を示す結果と言えます2)VO2maxは持久力を示す指標であり、これが高い方が心血管病イベントのリスクが少なくなることが知られているため、HIITは今後、医療分野でも注目されていく運動トレーニングになると思われます。

HIITを実際に行う上での利点は、10分程度の短時間でできること、また特別な道具を用意せずに屋内で行えることが挙げられます。しっかりと行えば週3回でも効果があると考えられています。

次回のブログでは、当院で職員を対象に行ったHIITチャレンジ(36か月のHIITの効果を検証したもの)の結果をご紹介したいと思います。

文献
1) Med Sci Sports Exerc. 1996; 28(10):1327-30.
2) Heart Fail Rev. 2023; 28(5):1113-1128.

“運動は薬”外来の詳しい内容はこちら
https://www.miyanomori.or.jp/undou/

<プロフィール>

鐙谷 武雄(あぶみや たけお)
当院副院長、専門は脳神経外科で、中でも脳血管障害(基礎研究に長らく従事してました)
運動習慣は、出来るだけ毎日のストレッチと8㎏ダンベルでの筋トレ、週2回程度のランニング、不定期の10分間HIIT(高強度インターバルトレーニング)、たまのゴルフです。